近年、注目されているイソフラボンという成分をご存知でしょうか?
イソフラボンは、健康や美容などに効果があるとされ、TVなどでも取り上げられているため、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
しかし、具体的にどのような効果があるのか? そして、どのような食品に含まれているのか?
そんな健康成分であるイソフラボンについて、詳しく解説していきたいと思います。
イソフラボンとは?
イソフラボン(anthocyanin)はポリフェノールの一種で、主に大豆の胚芽などに含まれる天然の色素です。
女性ホルモンに似た働きがあるため、特に女性の美容や健康に効果があると言われています。
また、イソフラボンはとても貴重な成分で、大豆の中に約0.2~0.4%程しか含まれていません。
イソフラボンの種類
イソフラボンには、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインの3種類の非配糖体(イソフラボンアグリコン)と、ゲニスチン、ダイジン、グリシチンの3種類の配糖体、そして配糖体のアセチル化体など約10種類ほどの成分があります。
これらを大きく分けると、「配糖体」と「非配糖体」の2つの形態に分けられます。
グリコシド型イソフラボン
配糖体のイソフラボンを「グリコシド型イソフラボン」といいます。
簡単に言うと「糖」が付いてる状態のイソフラボンで、豆腐・納豆などの大豆製品に含まれているイソフラボンは、ほとんどがイソフラボン配糖体(グリコシド型イソフラボン)として存在しています。
このグリコシド型イソフラボンは、周りに糖が付いているため分子が大きく、体内に入っても消化されにくい特徴があります。
アグリコン型イソフラボン
一方で、「糖」が離れている状態のイソフラボンを「アグリコン型イソフラボン」といいます。
味噌・醤油などの大豆発酵食品中に含まれているほか、人の体内でグリコシド型イソフラボンが腸内細菌の働きによって、イソフラボン非配糖体(アグリコン型イソフラボン)となります。
アグリコン型イソフラボンは、糖が離れているため分子が小さく、体内ですみやかに吸収される特徴があります。
ポリフェノールの一種
イソフラボンはポリフェノールの一種ですが、ポリフェノールとは多くの植物に存在する色素や苦味成分の総称で、その種類は5,000種以上もあります。
さらにその中のフラボノイドに分類され、他に緑茶などに含まれるカテキンやブルーベリーなどに含まれるアントシアニンがあります。
ポリフェノールは、植物が紫外線による酸化やウイルスから身を守るために作られており、老化や病気の原因となる活性酸素を除去する効果を持っています。
イソフラボンの効果と働き
イソフラボンの代表的な効果は、女性ホルモンに似た働きをする、エストロゲン様作用です。
そのため、健康や美容などに様々な効果があると言われています。
また、ポリフェノールが持つ強い抗酸化作用もあるため、老化防止や生活習慣病などの病気予防にも効果があります。
女性ホルモン(エストロゲン)作用
繰り返しになりますが、イソフラボンには女性ホルモンと同じような働きをするエストロゲン様作用があります。
イソフラボンの分子構造は、女性ホルモン(エストロゲン)と似ており、体内でエストロゲン受容体に結合することで同じような働きをしてくれます。
そのため、イソフラボンは「植物性エストロゲン」とも呼ばれます。
このエストロゲンは、妊娠にむけて美しい女性をつくる働きを持つホルモンで、潤いやハリのある肌、バストアップなど魅力的な女性をつくる役割を持っています。
つまり、イソフラボンには美しい女性をつくる美容効果があるのです。
さらに、イソフラボンは体内でエストロゲンが不足している時にだけ作用し、過剰な時はエストロゲンを抑えてホルモンバランスを整える優秀な働きがあるため、副作用の心配もありません。
骨粗しょう症対策
イソフラボンの持つエストロゲン様作用は、美容効果だけではありません。
加齢などエストロゲンが減少することで起こる骨粗しょう症の予防にも効果があります。
骨粗しょう症はカルシウム不足で起こるのですが、体内でエストロゲンが少ないと、どんなにカルシウムを摂取しても骨からカルシウムが溶けだして、カルシウム不足となってしまうのです。
そのため、イソフラボンの持つエストロゲン様作用によって、骨にカルシウムを蓄えておくことができるため、骨粗しょう症対策に効果があると言われています。
ただし、カルシウムをしっかり摂取することも忘れないでください。
乳がんの予防
乳がんは現在の日本で急増しており、15人に1人の割合でかかっている病です。
乳がんの原因のひとつはエストロゲンの過剰分泌で、エストロゲンが過剰に分泌されると、乳がんのがん細胞を増殖させる作用があります。
しかし、イソフラボンには、このエストロゲンの過剰分泌を抑える抗エストロゲン様作用の効果があります。
イソフラボンは、体内でエストロゲンが不足している時はエストロゲンを増やし、過剰な時はエストロゲンを抑えてくれるという優秀な働きをしてくれています。
この働きによりイソフラボンには、エストロゲンの過剰分泌で起こる乳がんの発症リスクを下げ、予防してくれる効果があります。
更年期障害・月経トラブルの緩和
イソフラボンの持つエストロゲン様作用は、女性特有の不調にも効果があります。
女性特有の不調には、女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少することで起こる更年期障害や、生理が始まる1週間ほど前から起こる月経前症候群(PMS)があります。
どちらも、精神の不安定や頭痛、腹痛などの症状をきたし、人によっては私生活に影響を及ぼす場合もあるやっかいな症状です。
しかし、イソフラボンのもつエストロゲン様作用が、女性ホルモンのバランスを整える事で、更年期障害の改善や月経前症候群生の緩和に効果があると言われています。
また、ホルモンバランスの乱れが原因で起こると言われる生理不順の改善にも効果あると言われており、月経トラブルの緩和にもイソフラボンは有効な成分です。
老化防止と病気予防
イソフラボンはポリフェノールの一種ですが、このポリフェノールには老化や病気の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用があります。
また、大豆胚芽由来のアグリコン型イソフラボンは、通常のイソフラボンの約1,000倍もの抗酸化作用を持つと言われています。
そのため、イソフラボンは老化や病気の原因となる体の酸化を防ぐのにとても効果的です。
美肌効果
イソフラボンには、女性に嬉しい美肌効果もあります。
その理由は、上記で説明してきたイソフラボンの持つエストロゲン様作用と抗酸化作用によるものです。
エストロゲン様作用は女性ホルモンに関わる働きがあるため、コラーゲンやヒアルロン酸の生成を促進して、潤いとハリのある美しい肌を保つ効果があります。
さらにイソフラボンの持つ抗酸化作用が、紫外線やストレスなどによって発生する活性酸素を除去することで、シミやシワを防ぎ若々しい肌を維持してくれる働きがあります。
この働きを応用して、イソフラボンの成分が含まれている化粧品も多く販売されています。
美しい肌を作り、維持することにイソフラボンはとても効果的と言えます。
育毛効果
まだハッキリとした事はわかっていませんが、イソフラボンには抜け毛・薄毛を改善する育毛効果があると言われています。
最近の研究で、男性の抜け毛の原因物質といわれるDHT(ジヒドロテストステロン)が、継続的なイソフラボンの摂取により減少したという報告があります。
まだ研究段階ではありますが、イソフラボンによる育毛効果は信頼性が高くなっています。
イソフラボンの多い食品(含有量)
イソフラボンを効果的に摂取するために、イソフラボンが多く含まれる食材を紹介します。
イソフラボンの多い食品 TOP10
食品名 | 平均含有量(100g) | |
---|---|---|
1位 | きな粉 | 266.2mg |
2位 | 揚げ大豆 | 200.7mg |
3位 | 大豆 | 140.4mg |
4位 | 凍り豆腐 | 88.5mg |
5位 | 納豆 | 73.5mg |
6位 | 煮大豆 | 72.1mg |
7位 | 味噌 | 49.7mg |
8位 | 油揚げ類 | 39.2mg |
9位 | 豆乳 | 24.8mg |
10位 | 豆腐 | 20.3mg |
※原料や種類、製造方法などによって含有量が異なるため平均値の数値としています。
参考:厚生科学研究(生活安全総合研究事業)「食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)」
イソフラボンは大豆製品に含まれている
大豆を原料とする製品のほとんどにイソフラボンは含まれています。
上記ランキングでは、きな粉に含まれるイソフラボン含有量がダントツという結果です。
大さじ一杯(6g)でも15.6㎎のイソフラボンを摂取することができるので、きな粉はイソフラボンの摂取に効果的と言えます。
その他、豆腐や納豆、味噌にも十分なイソフラボンが含まれているので、一般的な日本人の食事を日々していればイソフラボンが不足する心配はないと思われます。
1日の摂取目安量
現在、食品安全委員会によるイソフラボンの摂取目安量は1日70~75mg、サプリメントとして上乗せする摂取目安量は1日30mgとされています。
この摂取目安量を食品で摂るには、以下量をが目安となります。
- 豆乳:2パック(イソフラボン約82mg)
- 豆腐:1丁(イソフラボン約80mg)
- 納豆:2パック(イソフラボン約71mg)
なお、目安量を超えた場合による健康被害は、直ちに発生するものではないとされています。
詳しくは、副作用の項目をご覧ください。
イソフラボン不足の症状
現在、イソフラボンの欠乏症については確立されておらず、人の健康の維持に必須の栄養素とされていません。
しかし、イソフラボンには様々な効果・効能があることから、可能な限り積極的に摂取する事をオススメします。
イソフラボンの過剰摂取と副作用
現在、イソフラボンの摂取目安量は1日70~75mg、サプリメントとして上乗せする摂取目安量は1日30mgと設定されています。
しかし、明確な副作用などは確立されておらず、食品安全委員会でも「上限を超えて摂取したからといって直ちに健康被害が発生するものではない」と併記されています。
実際に、摂取量の70mgを超えてイソフラボンを摂取している人が約600万人いるデータがありますが、今のところ健康被害は報告されていないようです。
しかしながら、食品安全委員会による摂取目安量が設けられている以上、上限を超えての摂取はするべきではありません。
特に、長期的な過剰摂取は副作用のリスクを上げる可能性があるので注意する必要があります。
また、妊婦や胎児、乳幼児に関しては十分な試験データがないことから、目安量を超える摂取は推進されていませんので、注意してください。
考えられる副作用
イソフラボンの過剰摂取による症状として考えられるのが、ホルモンバランスを崩すことで起こる子宮疾患や乳がんなどです。
また、胃や腸の調子を悪くしてしまう可能性も考えられます。
何の食品でもそうですが、どんな健康食品でも食べ過ぎは体に良くありませんので、極端な過剰摂取はしないようにしましょう。
イソフラボンの効果的な摂取方法
美容や健康にとても効果のあるイソフラボン。
その効果を十分に発揮するために、上手な摂取方法を紹介します。
イソフラボンを含む食品を食べる
日々の食事にイソフラボンを含む大豆製品を取り入れる事で、効果的にイソフラボンを摂取する事ができます。
1日の摂取目安量は70~75mgとなっていますので、主な大豆製品での目安量は以下になります。
- 豆乳:2パック(イソフラボン約82mg)
- 豆腐:1丁(イソフラボン約80mg)
- 納豆:2パック(イソフラボン約71mg)
1日数回に分けて摂取する
上記の大豆製品から、イソフラボンをより効果的に摂取するために、1日数回に分けて摂取する方法が効果的です。
1度に大量に食べても、約8時間ほどで体内のイソフラボンは半減してしまいます。
そのため、朝・昼・夜などに分けて少量ずつ食べるのがいいでしょう。
例えば、豆乳や納豆なら「朝と夜で1パックずつ」といった摂取方法だと効率がよく効果的と言えます。
サプリメントで摂取する
イソフラボンの摂取方法で、サプリメントで使って摂取することもできます。
サプリメントのメリットは手間がかからず、必要な推奨量をサクっと摂取できる点です。
毎日などを食べたり、食べる準備をする手間も省け、経済的にも優しいです。
さらに、持ち歩く事も可能なので、いつでも手軽に摂取できる事が利点です。
ただし、イソフラボンをサプリメントで摂取する場合に、上乗せする摂取目安量が30mgと食品安全委員会によって定められています。
しかしこれは、「長期的かつ継続的に過剰摂取した場合に、何かしらの副作用が起こるリスクを完全に否定はできない」という内容であり、過剰摂取によって直ちに健康的被害があるわけではありません。
イソフラボンを含む大豆製品を食べられないなどの方は、サプリメントを利用してイソフラボンを摂取する方法がいいと思いますが、基本的には日々の食事に大豆製品を取り入れ、なるべく食事から摂取する方がいいと思います。
一緒に摂りたい栄養素
イソフラボンの持つ美容と健康の効果をもっと効果的にするために、一緒に摂りたい栄養素を紹介します。
ビタミンCと一緒に摂取する
ビタミンCは、抗酸化作用を持つ代表的な栄養素の一つで、イソフラボンのように美容や健康維持にとても効果のある栄養素です。
同じ美容と健康効果といっても、体内での役割は少し異なります。
そのため、イソフラボンとビタミンCを一緒に摂取することで、その美容と健康の効果をより強力なものにしてくれる効果があります。
カルシウムと一緒に摂取する
イソフラボンには、骨の健康を維持する効果がありますが、肝心のカルシウムがなくては骨も弱くなってしまいます。
そのため、カルシウムとイソフラボンを一緒に摂取することで、歳をとっても健康で強い骨を維持できる効果があります。
他の栄養素も一緒に
抗酸化作用を持つ栄養素にはビタミンAやビタミンEなどもあります。
また、カルシウムの吸収力を高める栄養素としてビタミンDなどもあります。
イソフラボンだけに頼るのではなく、他の栄養素もバランスよくしっかりと摂取する事が大事です。
まとめ
イソフラボンは大豆製品に多く含まれ、美容や健康にとても効果のある成分です。
また、強力な抗酸化作用も持っているため、老化防止や病気の予防にも効果があります。
十分な効果を発揮させるためには、継続的な摂取がかかせません。 日々の食事に大豆製品を取り入れ、効果的にイソフラボンを摂取して健康的な毎日をすごしましょう!